日々後ろ向き

世の中への不平不満愚痴

私は本当におかしかったのだろうか

五年に渡る結婚生活の中で、私は「不安障害」と診断された時期があります。「心気症」とも呼ばれる症状です。

 

先に書いた通り、元の夫は大体月の残業時間が200時間にもなるような超ブラック勤務の専門職でした。夫は若い頃から結婚したら子供がほしいと望んでおり、ほとんど夫への義理立てとして最初の妊娠をしました。

そのまま、流産をし、ホルモンバランスが崩れ、子供を失った辛さから妊娠することそのものが恐ろしくなりました。

最初は流産という辛いことがあったから「病的に」妊娠を怖がっている。おまえは「おかしい」と、精神科で診てもらえ、と夫や親に言われ、精神科を受診しました。

 

しばらくしても私の「妊娠したくない」という気持ちは変わりませんでした。当然のことと思います。ホルモンバランスの崩れから脳内物質に異常をきたしていたのは思うに最初のひと月、ふた月ほどで、そこからは「理由があって」子供を作ることを拒絶していたのですから。

以下が子供を作りたくなかった理由です。

①流産をきっかけに夫の無責任さが露呈しました。月残業代込みで手取りは30万でしたが、貯金はゼロ。月に10万近く、無心されるまま断りようもなく給料を渡しておりました。そのくせ子供のためなら何でもする、と口先では立派なことを言う。

②超ブラックの専門職は夫の夢の仕事でそれを退職するつもりはなく、私が入院しても夫は仕事場から抜け出すことすら出来ない状況。繋留流産だったので手術を受けたのですが、その日も夕方から仕事に出掛けました。

 

③産んでしまったら、確実にワンオペ育児。元々体力に自信がなく、自分が体調を崩しても子供の世話をしてくれる人はいない。

子供のための積立、貯金ができない環境、さらに結婚している以上、堕胎する理由はなく一度出来てしまったら産むしかない。冷静になって考えると、子供が欲しくない、出来てしまうのが怖いと思ってしまうのは、とりたてて異常なことではない気がするのです。

 

周囲の「普通」の押し付けに、私は苦しめられ続けました。

子供のいる友達の言う「一回流れたぐらいでそんな落ち込まなくても、また挑戦すればいいしそれが普通」

親の言う「結婚したら子供が欲しいと思うのが普通」

義理の親の言う「老老介護にならないためにも健康なうちに子供を作るのが普通」

そして、夫の「夫婦の間に子供はいるのが普通、女の人は子供を欲しがるのが普通」

 という言葉。

 

 

認知行動療法の先生(女性)が私ではなく夫に「こんなに奥さんを追い詰めてまで、子供が欲しい理由はなんですか?」と問い詰めた時、夫は「子供がいれば自分の生活が輝くから」と答えていました。

先生は女性として、こうした押し付けに疑問を感じていたのかもしれません。

父親は夫の意見に賛同し「犬や猫をかわいがれるのなら、子供だってかわいいはずなのになぜ欲しがらないんだ。子供がかわいくない、欲しくないと言うのは女として異常だ」と言い放ちました。

私は異常ではありません。

子供はかわいいし、好きです。小さな子が困っていれば手を差し伸べることだってできます。子供と遊ぶのも好きです。

ホルモンバランスの影響を受けやすい私が妊娠期体調を崩しても薬を飲まずに生活しなければいけない、つわりに耐えられる自信がない、出産の際の母体への負担が怖い、産んだ後育てていくだけの経済力、体力がないので責任が取れないことが怖い、そう思うのは、決して異常ではない。今では強く確信を持って言い切ることが出来ます。

 

当時夫は私を「病的に妊娠を怖がる精神疾患患者」だと決めてしまいました。

夫の理論は、こうです。

①おまえが子供を欲しがらない(子供が嫌いと決めつけた上で)理由を本を読んで勉強したのだけど、おまえの内面が未熟で、わがままで、自分の人生を犠牲にするのが嫌で、欲しがらないんじゃないのか、おまえはアダルトチルドレンなのではないか。

②子供が欲しくならないのは、流産時のPTSDが原因。精神科でもらう薬が効いてくれば妊娠出産への恐怖が消え、子供が欲しくなるのではないか。

③おまえは腐女子だから、性自認が男性で、子を産むという女性的な行為に抵抗があるのではないか。(私の性自認は生まれた時から女性で、同性をいいなと思ったこともないヘテロセクシャル、子供の頃は自分が妊婦になることに抵抗はありませんでした)

精神科で性自認の揺らぎが落ち着けば、「諸々治って」子供が欲しくなるのではないか。この考え方はLGBTの方にも失礼です。ボーイズラブが好きなことと性自認や性志向には何の関連性もありません。

 

やがて夫も、親も、夫の同僚も、義理の親も「都合の悪いことはすべて精神疾患のせい」と結論付けるようになりました。

 

同時期、おまえは病気を怖がりすぎだから、それも精神疾患に違いない。妊娠恐怖症と併せて効く薬を貰って来いと父親と夫に言われ、その件も通院していた精神科で相談するようになりました。下された診断は「不安障害」。

テレビやツイッターで毎日のようにこういう症状が出たらすぐ病院に行くように、気を付けているように、と情報が流れてくる環境で、胃もたれが続けば胃がんかなと疑って検査をうけるものではないでしょうか。手が痺れれば病院に行ってMRIを撮ってもらい安心したりするものではないでしょうか。急な動悸があれば、血圧が上がっているのではないかと心配するのではないでしょうか。

死ぬことが怖い、病気が怖い、それって、果たして疾患だったのかな、と。

みんな怖いですよね。病気って。例えば今の時期女性ならどうしたって乳がんが気になると思います。若くして亡くなった芸能人の闘病生活を詳しく知ったばかりですから。

胸にしこりがある気がする、と婦人科を受診するのは普通のことで、心配ないですよと医師に言われるまで、楽しいテレビを見ていてもどこか気にかかる、ということもあるのではないでしょうか。

恐怖や不安が強い時期は、安定剤が欲しいと思いましたし疾患だったのかもしれませんが、周囲が「おまえの怖がりようは異常だ、病気だ」と決めるのもおかしな話かと、今は思っています。

 

同様のことを怒っている時にも言われました。夫婦喧嘩をした時、頼みごとをやっておいてくれなかった時、疲れているのに、専業主婦のおまえが疲れることなんてないと言われた時、私はイライラしました。当たり前のことです。

「生理だからイライラしているんだ。俺に当たらず、薬を貰え」

「生理前だからイライラしている」

「女だから周期的にヒステリーを起こす」

 理由があって苛立っていることを、覚えたばかりの「PMS」という言葉で「疾患」扱いされました。

「何を怒っているの。生理だからイライラするんだよ。俺は八つ当たりされても言い返しはしないけれど、今は効く薬があるから婦人科に行った方がいいよ」

 ちょうど、生理周期と夫婦喧嘩の時期が重なったためにこう言われ、俺は普段と変わらないから、普段通りの生活に苛立ちを覚えるのならおまえは疾患なのだ、と言いくるめられてしまいました。違うのです。普段からずっと、夫の態度に、心ない言葉にイライラしていただけなのです。

 

今もツイッターを見ていると

生理でイライラしている人は命の母を飲みましょうとかこういうハーブが効きます

というようなRTが回ってきます。

それって本当に、生理で、PMSで、排卵期で、イライラしているのでしょうか。

ただ周りの人間が、その女性を蔑ろにし、苛立たせ、悲しませているだけではないのかと今となっては思います。自分が責められるのは嫌だから「女は生理があるから怒りっぽい」と「俺は理解があるからPMSとかも知ってる、婦人科を勧めるいい夫」と問題をすり替え、思い込ませているパターンも実はあるのではないかと思うようになりました。

本当に理由もなく、腹立たしくなったり涙が出たりしていますか? 

誰かが言うことをきかなかったり、誰かに悲しくなるようなことを言われたからなのではないですか?

 

さて、私の「妊娠恐怖症」(実際にはこんな病気はありません)。

認知行動療法が終わり、主治医が別の地方の大学病院に移ってしまうので大学病院から地元の病院に転院するよう促され、街の精神科医院に通い始めた所

「子供がほしくならないのは、性行為に対し嫌悪感があるのでは。あなたが頑なになっている」

 と言われました。とんでもない。自分で言うのも何ですが、私は性欲が強く、若い頃はその日に会った男性とホテルに行くような娘でしたし、流産前は夫が辟易するくらい性行為を求めていました。性行為に対して潔癖なタイプではありません。

そのことは診察前の事前聞き取りでも充分すぎるくらい説明してあります。

カルテ見てないのかな、と訝しく思いながら

「そうでしょうか、そうでもないかと思うんですが……」

と言うと

「どうしてそんなに子供が欲しくないの? 結婚した女なら、子供を産みたくないって考えるのはやっぱりおかしいんだけど。このまま投薬治療していても埒が明かないから、カウンセリング(保険適用外)で性行為や妊娠に対して気持ち悪いって考えを変えていくしかないわね」

とため息交じりに言われてしまい、この時点で私は(頑ななのは私ではなく夫なのでは)という疑問がありましたので

「子供にこだわる夫にも、先生とお話してほしいと思っているんですが」

と切り出すと

「御主人はおかしくないからね。おかしいのは貴方だから」

と怒られてしまいました。

 

そんな病院あるかよ、と以前認知行動療法に通っていた大学病院に再度転院し、新しく主治医になった先生に仔細を説明すると

「あなたはおかしくないよ。今は、結婚していても産むか産まないかは女性が決めるし、そういう状況なら産むのが怖いと思うのは当然のことだし、病気不安の方もあなたが追い詰められていて生活するのに困るというほどなら診るけど、話聞いた限りでは

普通の人だってそれぐらい気にするものだと思う。僕としては、結婚した後に状況が変わって子供が望めなくなったことを受け入れずに治療を強要するご主人には賛同できません。どうします? 治療を続けますか? 病気じゃないと思いますけど」

と言われました。

私は迷わず「夫が子供を諦めないようなら、離婚します」と答えました。

 

最終的にはいつ離婚を切り出されてもいいように、準備の最中で夫の方から「一緒にいても楽しくないし、辛いばかりだから」離婚しようと言われてしまったんですが。

最後の最後まで、「子供がいれば楽しかったのに、おまえが子供を欲しがらないから浮気をしてしまった、ギャンブルをしてしまった。子供がいれば日常は輝いただろうし、そんな風に刺激を求めずに済んだ。子供さえいれば」と言い訳をしていました。

子供がいたからといって日常が変わるわけがありません。

子供を育てるって、日常の積み重ねですから、地道に堅実に生きられない人間には成し遂げられないことだと思っています。

 

実は今日も午前中に気持ち悪くなって、めまいもしたので早退してきたのですが、胃薬と消化のいい食べ物をとって、お水やポカリを飲んで眠ったら治りました。具合が悪い最中は、元々血圧も高いので脳の血管に何かあったのかもしれない、手が痺れたり、頭が痛くなるようなら平日なんだし病院に行こうと思いましたが、まあ、みなさん考えますよね。用心しておくに越したことはないんです。

現状の自分は、最後に診ていただいた大学病院の先生が言うように治療が必要なパニック障害、不安障害ではないと考えています。

結局のところ、離婚前の自分が本当に精神疾患だったのか、そう思い込まされていたのかは今でもわからずじまいです。